R系列の給料1万円増額、嬉しいです!!
でも一方的は嫌です!!皆さんは?

嬉しい!あれ、私だけ?

 初めて投稿します。私は川崎重工の事務・技術職で主事をしています。
 来年4月からR系列の給料を1万円増額する記事を労組ニュースで見ました。
 つい嬉しくなり増額の対象となっている後輩に「1万円上がって嬉しいな」と話しかけたのですが、記事を見ていなかったようで「何のこと?」とつれない返事。そこで、内容を説明したのですが、私のように喜ぶことなく、少ししらけ気味でした。
 皆さんはどのように受け止めましたか?

世間水準の根拠は?

 会社説明では今回のR系列の賃金改定は、30歳前後の賃金が世間水準に比べて安いためとのことでした。欲を言えば世間水準を示す資料も提示してくれたら親切なのですが、残念ながらありません。これでは、"本当に世間水準なのか?"と言った疑問を氷解できません。そこで、会社に代わって"世間水準"の根拠を調べた範囲で紹介します。

 政府関係省庁はさまざまな資料をネット上に公開しています。その中に、厚生労働省のサイトで"平成21年賃金構造基本統計調査(全国)結果の概況"という報告書があります。
 そこを覗くと第12表で係長級(私たちの場合、係長と言わずにR2とランクづけられ、主事と呼ばれています)の全国平均が、男性で384.9千円、女性で344.7千円と記載されています。
第12表 役職、性別賃金、対前年増減率、役職・非役職間賃金格差及び平均年齢
(企業規模100人以上)
役職 男性 女性
賃金
(千円)
対前年
増減率
 (%)
役職・非役職間
賃金格差(非役職者
20〜24歳=100)
平均
年齢
(歳)
賃金
(千円)
対前年
増減率
 (%)
役職・非役職間
賃金格差(非役職者
20〜24歳=100)
平均
年齢
(歳)
部長級 636.1 -2.0 309 (309) 51.7 567.7 -7.5 284 (306) 49.9
課長級 515.7 -0.7 251 (247) 47.2 427.9 -3.7 214 (221) 47.6
係長級 384.9 -2.4 187 (188) 43.2 344.7 -1.6 172 (175) 43.9
非役職者
(20〜24歳)
205.7 -2.0 100 (100)   200.1 -0.3 100 (100)  
注:( )内は、平成20年の数値である。


 次に、第4図では、大企業の30歳(会社では30歳前後は主事になる直前の年齢層でR1、主事補といいます)の月収が男性で約300千円、女性で約250千円と読み取れます。
 
 一方、川崎重工では今回の賃金改定によって、
  主 事(R2)は、346,920円→381,920円
  主事補(R1)は、261,870円→291,870円
となり、紹介した厚生労働省の男性の数値とほぼ合います。おそらくこのデータを世間水準としたものと思われます。
 会社も合理的な基準を用いていると改めて感じました。裏を返せば、そうでないと世間から取り残される、通用しないということでしょうか?
 皆さんはどのように見ますか?

すごーい!! 取締役は従業員の8倍の所得

 紹介した資料が示すように今回の賃上げは世間並み賃金への増額であり嬉しいのですが、一つ納得いかないことがあるのです。それは、2004年以降、賃金の決め方が交渉でなく、能力・成果主義の名の下に一方的に会社が決める制度になっていることです。
 なにせ、要求さえもできないんですよ!!
 この気持ちに油を注ぐ資料を会社のホームページで発見したので紹介します。
川崎重工は有価証券報告書の提出が義務づけられており、内容がネット上で公開されています。同報告書から株の配当額、取締役報酬、従業員給与を表1にまとめました。

表1:川崎重工 単体財務諸表からの抜粋
会計年度 2006年度
H18
2007年度
H19
2008年度
H20
2009年度
H21
平均
配当額 (億円) 46.72 82.97 83.41 50.04 65.79
取締役 人数 (名) 10 9 10 13 -
年額報酬 (億円) 5.17 6.04 5.74 5.75 5.68
平均年額報酬 (億円) 0.52 0.67 0.57 0.44 0.55
従業員 人数 (名) 9,795 10,263 10,901 10,537 -
平均年齢 (歳) 43.2 42.9 42.3 42.1 -
平均勤務年数 (年) 21.0 20.1 18.7 18.6 -
平均年間給与*1 (円) 6,991,190 7,108,228 6,881,002 6,381,359 6,840,445
(注)*1:非組合員(課長、上級専門職以上)も含んだ平均
 


 まず4年間の平均で部課長含めた従業員の年収が684万円なのに対して、なんと取締役は5,500万円、実に従業員の8倍の年収を得ていることに驚きです。しかも、この高額所得を自分たちで決めているようで、要求さえもできない私は腹立たしさを感じました。
 
 それから、株の平均配当額65億円ですが、高額すぎてピーンときません。そこで、従業員一人当たりに換算して考えました。すると、川崎重工単体の従業員は約1万人ですから約65万円、グループ全従業員では約3.2万人なので約20万円にもなります。
 こんな高額な配当が可能であればR系列だけでなく、グループ全従業員に"再統合で一致団結、2020年ビジョンに向かってGO!GO!"的なスローガンで1万円の増額を実施すべきと思っています。株主への配当を半減して、38億円程度を当てれば可能です。従業員の士気を高めるために使うのであれば、株主の皆さんも納得して頂くと思っています。
 もし、この案が駄目なら、2009年度で利益剰余金という内部留保が1,376億円(一人当たりに換算すると、川崎重工単体従業員で約1,376万円、グループ全従業員で約430万円)存在します。この3%程度を当てれば可能です。まあ、いずれにしても取締役の報酬、株主への配当に力点を置くのでなく、従業員の生活向上も含めて考えても、会社には十分体力があると思っています。
 さて、皆さんはどのように思われますか?

交渉で決めるのが民主主義のルールでは?

 冒頭で紹介した会話にはその続きがあります。
 突然天の声で賃上げと言われても、喜びが沸かないのも仕方ないことと思い、賃金、ボーナスを組合と会社が交渉で決めていた春闘の話をしました。

  私   「昔は今と違って、組合が会社と交渉して賃金、ボーナスを決めていた。平均的に毎年1万円程度給料が上がっていた。」
  後輩 「へー。本当ですか!今とは違いますね」、「すぐに給料が倍になりますね。」
  私   「そやな。今とは違って、給料が上がって張り合いがあったし、車、旅行、家、子供の教育、など資金計画が立てやすかった。」
  後輩 「いい時代だったですね。」
 会話の中で、後輩が笑顔になったのが印象的でした。

 民主主義のルールの一つは話し合い、すなわち交渉だと思います。良いことでも一方的に決められると、その価値は半減します。私はまず、賃金を話し合いで決める春闘方式を是非復活させて欲しいと思っています。
 話し合い・交渉といった緊張感で賃金を決め、決まった後は従業員一丸となって協力し笑顔で仕事をする、こんなメリハリのある会社であって欲しいと投稿を書きながら改めて思いました。

 最後に、使用したデータはネット上に公開されています。数値が多く面白くないかもしれませんが、一度覗いて見てください。

(10.11.28)