CSRは負の遺産の清算から!

川重の談合裁判は一層不利に

 川重ホームページのトップページに「電子公告」という欄があり、8件(2008年7月25日現在)の記事が掲載されています。その大半の6件がごみ処理施設建設に関わる談合関係の記事(下表参照)です。
 川重の関係した談合裁判については日本共産党川崎重工委員会ホームページでも過去に取り上げましたが(「入札談合」、07.01.21)、以下では、その後の経過状況を調べてみました。

川重のごみ処理施設談合関係の係争事案
No.  日付 タイトル 備考
1 2007年12月14日 福岡市ごみ処理施設住民訴訟の上告について 最高裁に上告
2 2007年11月14日 神戸市ごみ処理施設住民訴訟の上告について 最高裁に上告
3 2007年 3月28日 公正取引委員会からの課徴金納付命令に関するお知らせ 公取審判へ
4 2006年11月29日 尼崎市ごみ処理施設住民訴訟の控訴について 高裁に控訴
5 2006年 7月27日 ごみ処理施設の入札談合に関する公正取引委員会審決への対応について 高裁に提訴
6 2006年 5月10日 福岡市ごみ処理施設住民訴訟の控訴について 高裁に控訴

出所:川重ホームページより作成

 これらの記事の概要は、神戸市、尼崎市、福岡市の各市民が、ごみ処理施設建設に関わる談合によって不当に高い建設費を負担させられたとして、川重等に不当利得の返還を請求している裁判や公正取引委員会の談合認定に関する審決への不服申し立てに関するものです。

 神戸市ごみ談合裁判(被告:川重) No.2(表の番号)
 神戸地裁判決(2006年11月16日)で返還額13.6億円(落札金額の5%)が認定されましたが大阪高裁判決(2007年10月30日)では16.4億円(6%)に増額して認定されています。ところが、川重はこれを不服として2007年11月14日に最高裁に上告し現在も裁判中です。

 尼崎市ごみ談合裁判(被告:川重等6社) No.4
 神戸地裁判決(2006年11月16日)で5.3億円(5%)が認定されましたが、川重等が控訴し大阪高裁判決(2007年11月30日)で市民側の訴えを棄却、市民側が最高裁に上告中です。

 福岡市ごみ談合裁判(被告:川重等の5社) No.1、6
 福岡高裁判決(2007年11月30日)では、20.9億円(7%)が認定されていますが、これも川重等は最高裁へ上告し(2007年12月14日)裁判中です。

 京都市ごみ談合裁判(被告:川重)
 川重ホームページの電子公告では掲載されていませんが、京都市ごみ談合裁判についても、京都地裁判決(2005年8月31日)で11.4億円(5%)に続き大阪高裁判決(2006年9月14日)では18.3億円(8%)の増額した返還命令が下され、最高裁が川重の上告を棄却し(2007年4月24日)、大阪高裁判決が確定しています。

 公正取引委員会への不服審判・裁判 No.3、5
 公正取引委員会のごみ処理施設建設に関わる談合を認定した審決に対しては、川重等大手5社は東京高裁へ審決取消し裁判を起こしています(2006年7月27日)。また、2007年3月28日には公正取引委員会が川重等大手5社の談合を認定し課徴金納付命令を出したのに対して不服審判を起こしています。


 ごみ処理施設建設に関わる談合の裁判の状況を見てみると、住民側の勝訴が圧倒的に多いのにもかかわらず川重は各裁判で最高裁まで争う姿勢です。また、公正取引委員会の談合認定に対しても審決を不服として争う姿勢です。今や談合の事実は否定しがたく川重にとって負の遺産となっていますが、川重は世論や司法判断を無視し続けており、「カワサキグループ・ミッションステートメント」でいう「高い倫理観・・・」とは相いれない姿勢です。

 ところで、川重ホームページには環境・社会報告書が掲載されています。2006および2007年度版報告書の「社会性報告」を見てみましたが、ごみ処理施設談合に関する記載は一切ありません。少なくとも京都市ごみ談合裁判で最高裁で敗訴した事実を踏まえ談合と決別する宣言くらいはすべきです。
 CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)を実践するなら先ず過去の負の遺産を清算することから始めるべきではないでしょうか。

(08.07.29)