民主主義と職場の実態

 

 今、世界ではチュニジアから端を発した「民主化のうねり」が地中海沿岸の国々から、民主主義を自負しているアメリカのウォール街へそして全米へと広がっています。
 今まで「民主主義」の代名詞のように言われていたアメリカにも、「民主化のうねり」が共鳴しています。
 一体、「民主主義」って何でしょうか?
 川崎重工でも、職場の中に「民主的な組合にして欲しい」・「これからの職場は、民主的でないとダメだ」という声が聞こえています。
 一見、百人いたら百通りの「民主主義」の見方があるように思いますが、日本や世界の情勢を見ていると、99%の見方が一致することの中に、「民主主義」が生きているように感じます。改めて皆さんと、この「民主主義]とは何かを、職場の実態から一緒に考えてみたいと思います。

1.民主化・民主的や民主主義という言葉から思い浮かぶ言葉

 まず思い浮かぶのは、「民主政治」という言葉です。
 次に、「民主化・・・」、「民主的・・・」、「民主主義・・・」という言葉に続く「・・・」の箇所に当てはまる言葉を考えて見ましょう。
 「民主化のうねり」、「民主化の嵐」、「民主化の道」、「民主的規制」、「民主的制度」、「民主的職場」、「民主主義の社会」、「民主主義の国」、「民主主義革命」などなど、たくさんあります。
 ここで気付くのは、「・・・」の箇所に当てはまる言葉に共通する点に、一部の限られた人が主人公になることではなく、多数者が主人公になるために不可欠な言葉が並んでいることです。
 次に、 対峙する言葉としては、「独裁」という言葉が、まず思い浮かびます。
 他にも、「暴力」、「不公平」、「不平等」、「利己」、「独断」、「抑圧」、「弾圧」、「横暴」などなどの言葉です。
 思い浮かんだどの言葉も、今、世界や日本の人々が「独裁者」や「抑圧者」に向かって、団結して打ち破ろうとしている言葉です。

2.民主主義は誰のためのものなのか?

 民主主義は、封建時代の専制君主の圧制から立ち上がった民衆が、ブルジョアジーの指導の下に起こした18世紀末のフランス革命が起源と言われています。
 しかし、専制君主から権力を奪った資本家たちにより、資本主義時代が築かれていったため、民衆の抑圧は解放されず、より厳しい搾取の渦に巻き込まれることになりました。
 表面上の自由が、資本主義の抑圧と搾取から民衆の目をごまかし、資本家たちによって「資本主義=民主主義」のように変質させられました。
 そのごまかしに、今、世界や日本、そして職場の人々が気付き初めています。
 「民主主義」とは何か、そして、それは、誰のためのものなのかを考える時代が到来しているように感じます。

3.職場の実態と民主的職場への道

 ある基幹職員は、「出来ないよと言っても、次から次へと仕事を押し込んでくる。ノーと言えない立場を悪用されている。到底、民主的な仕事のやり方とは言えないよ。どこか知らない上で、勝手に仕事の割り振りが決められている。」
 「仕事は山のように押し付けられるけど、仕事を振り分けられる部下もいないのにどうしろと言うんだよ。まさに名ばかり管理職だ。人手や予算の裁量も無く、結局、裁量がきくのは自分の働く時間だけだよ。」と話していました。
 組合員からは、「何人もの上司から、ノーと言えない状況で『この仕事だけだから』と無理やり仕事を突っ込まれてヘトヘトだよ。何でもっと上で話し合わないんだよ」と言う声が聞かれていました。
 派遣社員からは、「何人もの正社員の人から、ノーと言えない状態を利用されて、次から次に仕事を押し込まれている。民主的な仕事のやり方以前に、人権問題だよ。」
 「正社員の人以上の仕事をしているのに、評価をほとんどされず、逆に短期雇用契約を逆手に取られて常に、プレッシャーを受けている。」という悲痛な声も聞こえています。
 川崎重工は、コンプライアンス(法令順守)、CSR(企業の社会的責任)を重視して正社員のみならず、派遣社員も含めて啓蒙活動を行っています。
 コンプライアンスやCSRは、企業の中で働く全ての成員が守るべきことであるとして、川崎重工は活動しています。
 しかし、職場の実態は、コンプライアンスやCSRの活動を守る以前の、相変わらずの上意下達式の非民主的な仕事のやり方、下の人が「ノー」と言えない内心の自由を奪われた状態での非人権的な仕事のやり方など、が横行しています。
 職場では、非民主的な状態や非人権的な労働実態を実感しながら、その解決策を考える以前に、忙しさで思考停止状態になっていると言っても言い過ぎではない状態になっています。
 その解決への道は、川崎重工が自ら唱えるコンプライアンスとCSRを、全成員にただ唱えさせるだけでなく、職場の中に生きた形で実現していくことです。
 生きた形にするためには、川崎重工の自主性に任せるのではなく、働く職場の全成員自身が職場の実態を出し合い、そして、その解決策を民主的に話し合い、告発していくことが必要ではないでしょうか? そして、その民主的な職場作りは、21世紀に飛躍できる人財作りと企業作りに繋がるものと確信します。
 「民主化のうねり」を作っている世界や日本の仲間と歩調を合わせて、私たちの職場にも「民主化のうねり」を作っていきましょう。

(12.03.25)