川崎重工・船舶海洋カンパニー(坂出工場)から精密機械ビジネスセンター等への生産職の大規模な社内応援の提案について
ーこのような経営施策に未来があるのでしょうか?


2月20日の生産専門委員会において、船舶海洋カンパニー坂出工場から精密機械ビジネスセンターへ65名、神戸工場へ40名、総勢105名にもおよぶ社内応援の提案が会社からありました。

労働組合は、提案されたその日に中央執行委員会を開催し、「西神戸工場と坂出工場の操業を一時的にそれぞれ調整するために、有期の社内応援としたものと理解する。また、福利厚生や各種取り扱いの基本的な考え方についても解明できた」として、事実上承認する対応方針を確認しました。

会社の提案内容には、西神戸工場は「市場からの要求が増加しているため、顧客の要求数量を満たせない状態が継続している」ので早急に人員を確保する必要があり、「派遣社員を中心とした人員増強を継続しているが、依然として人員の充足に至っていない」ために、他カンパニーに応援を要請したとあります。

派遣社員を募集しても思うように集まらない要因の一つに、西神戸工場がこれまで、非正規社員を生産の「調整弁」のように扱ってきた問題があるのではないでしょうか。とくに、2012年10月末、就業時間中に契約社員約80名を食堂に集め、解雇通告したあと、あいさつもさせずに工場から強制退去させたことは、人間の尊厳を著しく踏みにじる行為でした。

また、船舶海洋カンパニーは、坂出工場の操業が一時的に低下するので、西神戸工場の応援要請に応じるとともに、従来からのカンパニー内応援も実施するとしています。

同カンパニーは、2017年3月、ROIC8%以上の達成を目標に、商船建造の軸足を国内から中国へシフトすることを決め、構造改革を推進しています。このような経営施策では、坂出工場は今後も操業度の低迷に悩まされるだろうし、将来性への不安から退職する従業員も増えると思われます。

この問題について、会社は昨年(2018年)11月末の中央経営協議会で、「今は我慢のとき、コストを下げ、体質を変え収益力ある強い組織を作っていきましょう」と述べていたにもにもかかわらず、仕事の内容が異なる西神戸工場からの応援要請にすぐ応じるようでは、労働者の不安は増すばかりではないでしょうか。

今日、職場では顧客の要求や操業の低下などを理由に、労働者の使い回しが当然のごとく行われています。経営施策としては、あまりにも安易で、場当たり的で、目先の利益優先と言わざるを得ません。このような経営施策に、果たして未来があるのでしょうか。

会社は、自ら制定した『行動規範』において、「『人間尊重』ならびに『健康第一』を旨とし、『安全と健康を最優先する職場風土を構築』」すると宣言しています。これは、働く人々や社会等に対する公約でありますから、その実現に最大限の経営手腕を発揮してもらいたいと思います。

私たちは、2018年に「働く人々の尊厳と能力が輝く職場に」という『私たちの職場綱領』を発表しました。また、『はぐるま』2014年秋季号では、住居は「基本的人権の基礎」であり、安易な遠隔地配転は許されないことも提起しました。働くすべての人と地域経済を大切にしてこそ、良い製品・サービスが供給できるし、中長期的には企業も社会も持続的に発展できるというのが私たちの確信です。

歴史ある会社がいつまでも地域や社会から信頼され、“いい会社だ”と言われるような会社であってほしいと願っています。いまこそ、何をいちばん大切にしなければならないのかを、経営陣はしっかり考えるべきではないでしょうか。労働者と労働組合も一緒に考え議論しましょう。

(19.03.19)