最近のしんぶん赤旗から

アメリカ発の世界金融危機の意味するもの

―21世紀は戦後のアメリカの世界支配体制を見直す形ではげしく動き始めた―

 アメリカ発の金融危機が世界を震撼させて以来、各方面で多くのことが語られてきました。その結果、それが何を意味するのかという全容がほぼ明らかになりつつあります。ここで改めて、その意味するところ、すなわち、まさに現在という時代がどういう意味を持っているのかを、最近の「しんぶん赤旗」や「経済」に掲載された論文等を参照して考えて見ましょう。

1. 「新自由主義」路線の破産

 まず、全ての論者が認めていることは、1980年代からイギリスのサッチャー首相、アメリカのレーガン大統領などの主導で始まった新自由主義、すなわち、全ての規制を取り払い、市場の論理に任せればすべてうまく行くと言う「市場原理主義」の路線が破産した、ということです。

 この新自由主義の路線はアメリカとその意を受けたIMFや世界銀行に受け継がれ、規制緩和とグローバル化を旗印に世界各国に押し付けられてきました。その結果、この路線は、債務超過問題でのラテンアメリカの場合でも、通貨危機のアジアの場合でも、日本の小泉内閣の構造改革路線でも、極端な貧富の格差を生み、一方で億万長者が生まれると同時に他方で多くの人々を貧困に落とし入れ、国民大衆の厳しい反撃に直面することになりました。

 日本での新自由主義の路線は、1980年代後半の中曽根内閣が福祉切り捨てや規制緩和、民営化を推し進めた「臨調行革」路線から、1990年代半ばからの橋本内閣の「行政、財政、社会保障、経済、金融システム、教育」の六つの分野でリストラを推し進める「六大改革」路線に受け継がれ、小泉内閣の「構造改革」路線で、大企業本位の規制緩和や社会保障の削減、郵政民営化、金融の自由化など、新自由主義に基づく政策が爆発的に実施されました。

 その結果、まず労働条件の分野では、労働法制の大幅規制緩和で1999年に派遣労働が原則自由化され、2004年に製造業まで拡大されたため、大企業での正規労働者から非正規労働者への置き換えが急速に進み、全産業で1997年に1152万人だった非正規労働者は2007年に1732万人へと1.5倍に増え、それに比例するように製造業のもうけを表す内部留保は88兆円から120兆円へ1.4倍に増えしました。(志位委員長予算委員会での質問、しんぶん赤旗09.2.5)。

 大企業が大もうけをする一方で、年収200万円に満たないワーキング・プアーと呼ばれる労働者やネットカフェ難民、ホームレスの増大など貧困化と格差の拡大が進み、大きな社会問題になりました。そして、アメリカ発の金融危機の影響で景気にかげりが生ずると、トヨタをはじめとする自動車産業や電機産業、日本経団連会長の企業のキヤノンなどがいっせいに「派遣切り」を行ない、多くの労働者が寒空のもと路上にほうりだされました。これに対し多くの派遣労働者が個人加盟労組に加入して違法な「派遣切り」に反対する闘いに立ち上がっています。「年越し派遣村」に数百人の派遣労働者が集まって声を上げたのは、一つの象徴的な出来事でした。

 次に、景気の面では、金融危機の直撃を受けた日本は、2008年10〜12月期の実質国内総生産(GDP)が、年率換算で前年比3.8%減の米国や5.7%減の欧州に比べて2倍以上の12.7%減と厳しいマイナス成長に落ち込みました。これはなぜか? それは、日本が「構造改革」路線によって、極端な「外需頼み」、とくにアメリカへの輸出だのみの脆弱な経済を作ってしまったからです。すなわち、小泉内閣が、大企業の「国際競争力」を強めれば日本経済は強くなるというかけ声のもとに大企業本位の税制、財政、労働政策を採った結果、一握りの輸出大企業は空前のもうけを上げるようになりましたが、労働者の賃金は引き下げられ、非正規雇用への置き換えが進み、庶民増税と社会保障切捨てが追い討ちをかけました。このように、内需を犠牲にして外需だけで稼ぐという外的ショックにきわめて弱い経済体質を作ったため、アメリカ発の金融危機の影響をもろに受け、景気の墜落につながりました。(志位委員長「党旗びらき」での挨拶、しんぶん赤旗09.1.6)。

 さらに、新自由主義の路線に基づいて橋本内閣以来進めてきた「金融ビッグバン」=金融規制緩和路線によって、東京証券取引所の株式の売買の6〜7割はアメリカを中心とする外国人投資家によるものとなり、そのほぼ半分はヘッジファンド(投機的基金)と言われています。金融危機が起こるとヘッジファンドは問答無用で手持ちの株を投売りし、株の大暴落を引き起こして日本経済に大きな打撃を与えました。投機的市場は大企業を「首切り」競争に追い立てる圧力になっています。(同上)

 以上のように、小泉内閣が日本の財界とアメリカの意に従って実施した「構造改革」路線が結局のところ、日本国民を貧困化に突き落とし日本とアメリカの大企業を肥え太らせるだけの悪政だったことが、誰の目にも明らかになりつつあります。国民は、小泉流の「構造改革」路線に見事に騙されていたことに気づき始めました。 したがって、全ての規制を緩和して市場の論理に任せれば、すべてがうまく行くと言う「新自由主義」の路線が破産したことは明らかです。