2. アメリカ式金融資本主義=カジノ資本主義の破産

 1980年台以降、アメリカの投資銀行を中心とするウォール街の勢力と、それに近いアメリカの財務省およびアメリカが支配するIMFや世界銀行などの国際金融機関が、途上国を含めて世界各国に圧力をかけて世界的な金融の自由化、規制緩和を推し進めました。その結果、世界的に金融の自由化が進み、IT技術の発達とあいまって機関投資家の巨大な資金が世界を自由に動き回れるようになりました。

 アメリカでは1930年台の大恐慌を契機にして、銀行と証券業を分離するグラス=スティーガル法が制定されましたが、これが証券業への参入を望む銀行業界の働きかけで1999年に事実上撤廃されました。それと並行して国際決済銀行(BIS)を舞台としてアメリカとイギリスが中心になって、銀行の自己資本が少なくなると損失が発生したときにそれを吸収できないと言う理由から、自己資本比率を8%以上持たない銀行は国際金融市場で活動してはいけないと言う紳士協定、バーゼル合意が結ばれました。銀行は自己資本を増やすと自己資本利益率が下がって株価も低下するので自己資本は増やしたくない。そこで、バーゼル合意に必要な自己資本を小さくするために証券化を推し進め、会計上のリスクの出る取引を貸借対照表の外に移すオフバランス化の方策を利用するようになりました。こうして金融の証券化が急激に進みました。また、バーゼル合意では必要自己資本の算定モデルを民間銀行に任せたために、規制の民営化、空洞化が進み、ルールなき金融化、ルールなき自由化が進んでいきました。(高田太久吉、"経済"、NO160、09.1、P32)

 このようにして商業銀行の投資銀行化が進み、巨額の投資マネーが世界を暴走するようになりました。直近の2008年10月のデータによると、世界の実物経済を表すGDP(国内総生産)の総額が60.1兆ドルであるのに対し、株式、債券、預金などの金融資産の総額は166.8兆ドルに達しています。つまり、100兆ドル以上金融経済が実物経済を上回っています。この100兆ドルの中の数十兆ドルは、投機マネーとして世界中を暴れまわり、繰り返しバブルを作り出してはそれを崩壊させています。バブルの際にも、その崩壊の際にも、実体経済、とくに諸国民の暮らしを破壊しています。(志位委員長の新春トーク、しんぶん赤旗09.1.1)。

 アメリカは「金融立国」の道を突き進んできましたが、驚くべきことに企業があげたもうけの約50%が金融業のもうけになっています。この50%のうち30数%は金融機関がもうけたものですが、残りの10数%は巨大自動車企業のGMなどの多国籍企業が、金融業に乗り出して稼ぎだしたもうけでした。こうしてものつくりができなくなり、金融業が経済の中心を占めるようになりました。中心を占めていた金融が破綻すると、後に何も残らなくなってきます。(同上)

 以上のように、アメリカが推し進めてきた金融資本主義=カジノ資本主義はサブプライムローンをきっかけとした今回のアメリカ発の金融危機によって完全に破産しました。

 また、アメリカ式金融資本主義のもう一つの側面である株主資本主義にも強い批判が高まっています。企業は誰のためのものか? 株主さえ潤えばそこで働いている労働者が飢えてもいいのか? 企業の社会的責任とは何か?
例えば、トヨタ自動車はこの八年間に、株主への中間配当を五倍に、内部留保を二倍近く増やしていながら、大量の派遣労働者の首を切っています。志位委員長はトヨタの経営陣との会合で、「いま日本の経済界では、労働者の生活よりも、大株主への配当を優先させる傾向が顕著だと思う。こうした『株主至上主義』とでもいうべき風潮は、資本主義のあり方としても一つの堕落ではないか」と追求しました。(志位委員長トヨタと初会談、しんぶん赤旗、09.2.18)