ドイツ現代史に学ぶ講演会

 読者の方から「ドイツ現代史に学ぶ講演会に参加しました」という投稿がありましたので紹介します。


 4月26日に「九条の会ひがしなだ」主催の「ドイツ現代史に学ぶ講演会」が甲南高校・中学校非常勤講師 根津茂さんを講師に迎え行われました。内容は、ドイツと日本の戦争責任の取り方の違いについてでした。

 ドイツは、徹底して戦争責任を取りつづけていると、次の様にその一例を紹介されました。
  自国民によるナチスの追求(ナチスに時効なし)
  各国の戦争被害者に対する個人補償
  歴史教育の徹底と教科書の内容について隣国と協議
  強制収容所やゲシュタポの監獄などを保存
  ナチスへの抵抗運動を顕彰
  強制労働の犠牲者を戦没者墓地に埋葬し弔う

 一方、日本はドイツと正反対のことをしてきたと、次の様に指摘されました。
  首相や閣僚が戦犯を祭っている靖国神社へ参拝
  侵略戦争と認めず、アジアを解放するための戦争だったと侵略戦争を賛美
  「村山談話」、「河野談話」の見直しを主張
  慰安婦などの戦争犠牲者の個人補償要求を拒否
  教科書への政治的介入

 なぜこのような大きな違いが生まれたのかとの問いに、次の様に回答されました。
  ドイツは9カ国と国境を接しており、戦後国際社会に復帰するために戦争責任を認め、隣国と和解することが必要だった。
  侵略した国々と地続きであったため、侵略した国でナチスが何をしたのかをドイツ国民も見聞きしていた。(加害者としての自覚があった)
  ナチスは自国民に対してもナチスに反対する者を強制収容所に入れ、障害者をガス室送りにした。
  隣国が政治的にも経済的にもドイツと対等の先進国だった。

 一方日本は、
  島国であり、中国や韓国で日本軍が何をしたのかを日本国民が知らなかった、知らされなかった。
  戦後アメリカと軍事同盟を結ぶことで復興を果たし、アジアの国々と和解する必要がなかった。
  アジア唯一の経済大国であり、発展の遅れていた中国や韓国などのアジアの国々を目下に見ていた。

 最後に、2人のドイツ人政治家の言葉を紹介し講演を終わられました。
 「民族には、自らの歴史を冷静に見つめる用意がなければなりません。なぜなら、過去に何があったかを思い起こせない人は、今日何が起きているのかを認識できないし、明日何が起きるかを見通すこともできないからです」
−ヴィリー・ブラント(ドイツ首相)1970年5月8日

 「過去に目を閉ざす者は、結局のところ現在にも盲目となります。非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、またそうした危機に陥りやすいのです。」
−リヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー(ドイツ大統領)1985年5月8日

 ドイツは、戦争責任を真摯に認め、謝罪に真剣に取り組み、ヨーロッパで中心的な地位を確立しました。一方、日本は戦争責任から逃げつづけ、近隣諸国の信頼を得られないでいます。そして、尖閣や竹島で中国、韓国との間に領土問題が存在することを認めず、靖国参拝などにより対話による解決の道を自ら困難にし、軍事衝突の危機を増大させています。さらに、この危機を利用して、集団的自衛権の行使を容認し、アメリカと一緒に戦争する国になろうとしています。
 2人のドイツ人政治家の言葉が、まるで日本の未来を暗示しているようで恐ろしくなりました。二度と戦争をしないために、二度と加害者にならないために、戦争責任を真摯に認め、憲法九条を守り、集団的自衛権行使容認に反対していかなければならないと強く思いました。

(K記)


(14.05.25)