「はぐるま」 2025年 夏季号 NO.264 |
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今年6月26日開催された川崎重工の定時株主総会には254名の株主が出席され9人が発言されました。2件の法令違反問題、離職者やメンタルヘルス相談が多い問題などに加えて、中国出向過労死事件の原告からは、海外労働環境、命の重みについて質問されました。
中国出向過労死事件とは
2013年に川崎重工社員のプラントエンジニア(当時35歳)が中国の合弁会社に出向し3か月後に自死した事件で、2016年に国が労災と認定しました。しかし川崎重工が謝罪も話し合いも拒否し続けたため、被災者のご遺族は川崎重工に謝罪と再発防止をもとめて神戸地裁に提訴されました。
この裁判は今年1月に川崎重工の安全配慮には問題がないとして原告の訴えが棄却されました。原告は大切な夫を労災で失ったのに川崎重工に一切の責任がないとした判決を不服とし大阪高裁に控訴し係争中です。
原告の訴えと社長回答
原告は、孤立しやすい海外勤務者の支援体制はどうなっているのか、「人を大切にする経営」へどのように歩まれていくのかと質問されました。橋本社長は「仕事で亡くなられた奥様にこうしてわざわざ会場まで来ていただいてその思いを皆さんの前で語って頂けることは我々にとっても本当に大事なことだ」「こうした事態が起こったことに非常に辛い思いで過ごしてきた」と、原告の質問への明確な回答はなく、裁判の争点でもある被災者ご遺族への謝罪と再発防止については、ひとことも触れることはありませんでした。
労働者の安全は経営の責任
橋本社長は総会の中で、物言えない人がいたこと、コミュニケーション不足を認めながらも今後改善していく課題だとするのみでした。
海外勤務者は孤立し健康、安全が軽視されるケースが多く、改善が急がれています。過労死事故への謝罪も反省もない態度は、命と健康を軽視していると言われても仕方ありません。川崎重工が過労死事件を重く受け止め、経営責任を果たすことが川崎重工の健全な発展に不可欠ではないでしょうか。
年間一時金 個人業績に大きな格差 |
今年の一時金は会社の最高益の中で、初めて200万円を超える支給額となり、職場からは支給額に「びっくりした」との声もありますが、V/A系列には依然として大きな格差があります。
ここまでの格差が必要か
KHI・KRMのV系列の個人業績額はV3の最高水準で約115万円、最低水準0円、KMCは最高水準で約122万円、最低水準は約37万円と昨年と同様に大きな差をつけています。
評価基準があいまいなもとで、これだけの差をつけるのはものづくりの一体感をこわすものではないでしょうか。
非正規社員は蚊帳の外
会社は2024年度最高益となり、従業員には今春闘でも、年間一時金も労組の要求に満額回答しましたが、同じ職場で働く非正規社員の方は取り残されています。
非正規社員も重要な生産を担っています。会社の発展のためには待遇改善が不可決です。
社長の報酬は1.4億円、株主にも多額の配当を渡しながら、非正規規社員には何も還元されていません。非正規社員からは「頑張っても報われない」という声が出ています。会社は大幅な単価の見直しや一時金の支給などで報いるべきではないでしょうか。
時短で豊かな生活と 人間性を取り戻そう |
【働き過ぎです】
日本のフルタイム労働者の労働時間は年間2021時間、ドイツ1652時間、フランス1425時間、イギリス1697時間とヨーロッパ諸国に比べて年間300時間も長く働いています(OECDデーター等による)。
2024年の川重全社平均は1988時間で働き過ぎです。
【世界は週35時間へ】
フランスではすでに「週35時間労働制」が確立し、それを「週32時間労働制」にしようと闘われています。
ドイツでは労働協約で35時間労働が増えており、賃金補償を伴う週32時間への短縮、週4日労働が要求されています。
ベルギーでは最低賃金が、フルタイム週38時間で日本円になおして33万円、産業別の金属労働者が43万円です。
【時短で生まれる豊かな生活】
時短により得られた自由な時間は次のような可能性が生まれます。
・余暇や趣味を楽しみ、豊かな教養を育み、社会活動へも 参加できます
・家族・友人、自然に触れ合い人間性を取り戻せます
・男女がともに家事や育児、介護などのケアを分かち合える社会にできます
【時短と賃上げはセットで】
日本共産党は「自由時間拡大のための労働時間の短縮を推進する法律案」(自由時間拡大推進法)をつくり、「1日7時間、週35時間制」に移行することを国に要求しています。
自公政権により働く人の実質賃金は長く物価上昇に追いつかず暮らしが悪化しています。労働時間の短縮と賃金の引き上げはセットですすめてこそ、働く人に真に豊かな生活をもたらし経済の好循環にもつながります。
【大河】 この参院選でも政権与党の自公議席を過半数割れに追い込んだ。しかし根拠のない外国人への差別を売り物にする排外主義・極右的潮流が議席を大きく増やした。差別をなくし人権と民主主義を守る歴史の流れへの危険な逆流の台頭といえる。 自公政権の悪政を手助けしてきた補完政党が議席を増やしたことも相まって国民が願う政治は由々しき状況だ。責任ある財源提案とセットで賃上げ、医療と介護を守る社会保障予算の拡充、大軍拡に反対し平和憲法を生かし外交の力で平和を築くといった日本共産党の政策は希少だが輝いている。 公正で民主的な選挙を求める声に押され政府は今年3月選挙の品位を保持するための改正公選法を施行。しかし外国人に対する根拠のないデマや、高齢女性への差別的な発言なども拡散した。公選法改正は十分に機能しなかった。 事実に反する扇動的で謀略的な宣伝、いいかげんな噂話がネットに氾濫したら正しい情報を見極めることが困難だ。意図的に思えるデマ情報や差別的な言動が視覚に飛び込んでくることも多い。何を信じてよいのか不安になる。こうなるとネットは、人や社会を分断する。 ![]() EUではフェイクニュースや偽情報を法律で規制し違反者には高額の(1千万円を超える)罰金などを科すケースもある。日本でも実効ある法整備を急ぎデマやヘイトで人を傷つける誹謗中傷をなくすとともに、民主主義の根幹である公正な選挙は厳格に保障されるべきだ。 ![]() |
「従業員にとって働きやすい職場」とは WinDEX結果から見えてきたこと |
会社は「グループビジョン2030」の実現には、従業員が「働きがい」を持ち「働きやすい環境」でイキイキと働けることが重要だと述べています。
私たちにとっても「働きがい」は、自分や家族の生活を支え、自分自身の「生きがい」でもあります。
WinDEX結果と実態
働きがい・働きやすさの状況を計測した2024WinDEXの報告では、両方満足(活躍グループ)は昨年より2%向上し31%。会社は社員を大切にして配慮している、従業員は経営陣を信頼している、従業員はキャリア上の目標達成の見込みがあるなどが向上したとしています。
しかし職場では、災害に歯止めがかからない、メンタル不調休職者数も増加傾向、コンプライアンス報告相談件数は昨年92件(20年39件)に増加、自己都合退職にも歯止めがかからないなど、働きがいがあり働きやすい職場とは言いがたい実態ではないでしょうか。
労働者が求める職場とは
6月の労組専門部会を前にした支部部会において、WinDEX結果をもとにエンゲージメント向上に向けて、次のような意見が出されています。
立場に関係なく自由に発言できる。職場での情報共有。相談や助け合える職場。業務に見合った処遇と正しい評価。いつでも議論できる機会をつくる。風通しの良い職場。昼休みの食堂の混雑解消。育児と仕事の両立のためのサポートについてなどです。
新人事制度で頑張りを評価すると従業員を急き立て競わせるのでなく、自由にコミュニケーションがとれ、共に助け合える「風通しの良い」職場が働きやすい職場であり、結果「グループビジョン2030」の実現にもつながるのではないでしょうか。