「はぐるま」 2017年 4月号外


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川崎重工の「船舶海洋事業の構造改革について」に異議あり
機関投資家ファースト(第一)のリストラ策に未来があるのか?
従業員・派遣社員と地域経済、ものづくりファーストを基本に!



川重は、3月31日の取締役会において、次の船舶海洋事業の構造改革を実施することを決定したと発表しました。


目標  :2020年度に税前ROIC8%以上の達成
基本方針:商船建造の軸足を国内から中国へシフト
  具体的には
商船国内建造は坂出に集約(神戸は潜水艦中心に)
坂出工場は2ドックから1ドックに削減

中国のDACKSは、1ドックから2ドックに設備投資
固定費削減、生産性向上等による国内工場の収益性改善など


神戸工場は商船建造撤退、中国へのシフトで産業空洞化に拍車


川重の創業事業であり、120年の歴史をもつ神戸の商船建造を、もうからないという理由で本当に切り捨ててよいのでしょうか。中国の人件費等が安いからといって地域経済を見捨て、国内の産業空洞化に拍車をかけてもよいのでしょうか。会社は、「痛みを伴う」とか、他カンパニーへの応援・配転もあり得るとも言っています。職場では、とくに派遣社員の中に雇用不安が広がっています。これでは、雇用や地域経済を守るという大企業の社会的責任をまったく放棄するものではないでしょうか。

「多額の損失」の原因や経営責任の究明もなしに、「ROIC8%以上の達成」の結論ありきの構造改革では?

発表では「2年間で多額の損失を計上」したと述べていますが、そのほとんどがブラジルへの無謀な投資の失敗によるもので、幹部職員からも「経営陣のミスを押し付けるな」と怒りの声があがっています。今回の決定は、ものづくりの立場から真剣に「損失」の原因究明を図ったとは言い難く、「損失」を口実に、初めからもうけるためだけの方策と言われても仕方ない内容です。

機関投資家ファーストのリストラ策に未来があるのだろうか?

金花社長は、「企業は社会の公器であり・・・当社グループのあらゆるステークホルダーの期待に応えていかなければならない」(川重ホームページ)と述べていますが、今回の決定は株主だけの期待に応えたものと言えます。しかも、川重の主要株主の上位は、機関投資家であり、株の売却益が目的のファンドです。彼らのもうけのために、「損失」に何ら責任のない従業員・派遣社員と協力会社労働者に、「痛み」を押し付けるリストラ策に果たして未来があるのでしょうか。あの経営危機に陥っている東芝が思い浮かびます。

また、三菱神戸造船所に続き川重も商船建造から撤退となれば、神戸のシンボルであり裾野の広い商船建造の灯が消え、国民の血税を使う潜水艦建造一色の町となり、これではとても住民の理解が得られないでしょう。

経営者は、従業員・派遣社員と地域経済ファーストで、将来を見据えたものづくりの発展に総力を尽くすべきです!

日本の造船業は、これまでも好不況の波を受けながらも成長・発展し、世界の海上輸送の効率化、安全性向上、環境負荷低減に大きく貢献してきました。日本の貿易輸送の99%以上が船舶であり、会社も認めているように、造船業は中長期的には成長産業です

海運市況が厳しいときこそ、経営者としての役割の発揮どきです。決して少なくない内部留保(裏面参照)と総合重工という利点を十分に活用しながら、従業員・派遣社員と地域経済ファーストで、将来を見据えた魅力あるものづくりの展望を示すべきでしょう。

ROIC(投下資本利益率)=利益/投下資本 ・・・どれだけ効率的に利益をあげているかの指標
機関投資家・・・顧客から拠出された資金を運用・管理する法人投資家の総称(証券用語解説集から) 


大企業の株主資本主義(株主第一主義)の経営に対する
日本共産党の大門議員の国会質問
2017年3月30日参議院財政金融委員会) 
【麻生大臣の答弁】  【大門議員の質問】 

この間から感心して聞いていたんですけれども、・・・労働分配率は・・・昔は78から80あったと思うんですね。今、70切って、66か67そんなもんだと思いますよ・・・間違いなく労働者に対する労働分配率が下がっているということですよ。・・・

この間政府のある関係会議に出て、経営者は利益が出たら、どうするかって、自己株買い、自己株買ったらご存知かと思いますが、配当上がりますから、自己株買いが増えるってことですよね、これは。会計学の基本みたいな話ですが、もう一つはM&Aですよ。で海外の会社を買う、・・・まあ利益はすべて設備投資に回さない。賃金にも回さないって話になって。自己株買いやって、配当増やすか、・・・余った金は内部留保。毎年23兆から25兆円増えて、この3年間で73兆円も増えましたから、そういったような実態になっているのが、今の日本。それで税金安くしろと言うから、ふざけてくれるなと言って・・・

ベースアップしたのはメガバンク3行の内、1行だけですからね。あとのとこはやってないでしょうが。なんでたたかないんですか皆。共産党なんか最も言えると思いますがね。我々自民党なんか言いにくいのがいっぱいいるのかもしりませんけど・・・デフレが長く続いたせいで、かなりメンタルには追い込まれたし、企業も今のままではうまくいかなくなったし、・・・経営者の意識を変えてしまった。非常に大きな所だと思います。ある時、力を持って変えていかんと、どうにもならんなと私はこの10年くらいそう思っていましたんで・・・給与、まあベースアップはしんどいかもしれないけれど、一時金でもなんでもよいのですよと・・個別の経営者にはほとんどこの話をこの4年間、最低3年はしている・・・言われてみればそうですねと言う人もいっぱいいるので、ある程度警告して揺さぶっていかないといかん

 

お聞きしたいのは、今の日本の資本主義がこのままで良いのかということであります。・・・大企業の内部留保の問題です。それが賃金などを通じて国民に回っていない、それが今の日本の経済の構造的な問題点だということです。・・・わが党は別に大企業をですね、敵だとかやっつけてやろうと思っているわけでありませんので、あまりにも大企業寄りになっている日本の経済政策、政治の問題を取り上げている・・・

2010年から2015年の比較で、経常利益が1.55倍になっている中で、配当金はそれ以上に伸びている。一人当たりの年間役員報酬が伸びているが、賃金が1.01倍、ほぼ横ばいにしかなっていないということです。・・・

ROEという物差しが出てまいりまして、自己資本利益率ですね。分母が資産とか資本で、分子が利益です。このROEが高いほど、企業価値が高まって株価が上がるということで、追及されてきています。人は出来るだけ減らして、利益を生むと、その会社の株価が上がると、これすべてROEという変な物差しが、ずっと経営を支配してきている中で起きていることだと思います。・・・今いろんなことが起きていますが、根源はこの経営のあり方に大本があるのかなと思うわけです。・・・株主資本主義がいろんなことを歪めているんじゃあないかと思うわけであり、・・・麻生大臣は経営者のお一人として、こういう日本の今の経営について、あるいは資本主義のあり方そのものなんですけれど、いかが思われるか税制の議論もまとめてお聞きしたいと思います。

 


川崎重工
「ROIC経営」と共に株主配当急増
 
内部留保も増大

一部を活用しただけで、従業員・派遣社員の雇用を守り、月1万円の賃上げ、下請・派遣単価の引き上げが十分可能。

連結従業員3.46万人x月1万円x12か月=約42億円
内部留保の0.9%

内部留保は従業員・派遣社員・協力会社労働者の労働の結晶です。
いまこそ、内部留保の活用を!

2010年から2015年(5年間)の推移

経常利益 1.9 倍 ( 932億円)
配当金  4.0 倍 ( 200億円)
内部留保 1.3 倍 (4602億円)
基準賃金 0.99倍 (29.8万円)一般従業員
( )は2015年度の数字