播磨工場技術部門の神戸工場への集約

 

 2011年6月13日の生産専門委員会の席で、会社側から「プラント・環境カンパニーにおける播磨工場技術部門の神戸工場集約」について、提案がありました。

 職場では、急な会社側の提案に対して、「今までの播磨工場への技術・生産部門の集約は、何だったのか?」、「これから、会社側は何をしようとしているのか?」などのいろんな声が聞こえています。

 播磨工場の今までの組織改定の経緯と会社側の提案内容、そして、職場の声を基に、今回の移転集約問題を考えてみたいと思います。

1.播磨工場の生い立ち

 播磨工場は、1971年に産機プラント事業部(現プラント・環境カンパニー)の各種プラント製品や大型機械製作の主力工場として立ち上がりました。その後、プラント部門が海外案件で大きな赤字を出したり、受注が減ってきたことなどで、鉄構機器事業部へ編入されました。

 それ以降、鉄構機器事業部は、鉄構ビジネスセンターと改名し、千葉工場・袖ヶ浦工場・野田工場・神戸/土木機械技術部門などを集約しました。

 その鉄構ビジネスセンターも、橋梁・水門部門からの撤退や談合事件との関わりもあり、衰退の一途を辿り、本社直轄を経て、大型構造物ビジネスセンターとして車両カンパニーに編入されました。

 この大型構造物ビジネスセンターも、長続きせず、2010年にプラント・環境カンパニーに編入されたのです。

このようにプラント部門は、会社の都合で編入、集約を繰り返してきた経緯があります。

2.会社側の提案

 会社の主旨は、「神戸工場及び播磨工場に分散している当カンパニーのエンジニア及び共通部門(プロジェクト管理部、調達部、工務部、建設部、制御システム部等)を神戸工場新総合事務所に集約することによりカンパニーとしての組織的な機能強化と効率化を図りたい。」というものでした。

 具体的には、「製担(製品担当)技術部門のエンジニアのフレキシブルな活用」、「シナジー効果(相乗効果)の発揮」、「神戸集約により人員・組織のスリム化と効率化及び機能強化を図る」、「全ビジネスユニット一体となった播磨工場の活用」が謳われています。

 移転対象技術部門の人員予定数は、幹部職員83名、組合員78名、派遣社員54名の計215名です。

 職場では、個別確認と組合集会での意見集約を行っています。

3.職場の声

 ある幹部職員は、「移転集約の話は、それとなく昨年の末頃には聞いていた」と話していました。「通勤時間が今より長くかかるけど、移ることを良いとか悪いとか、始めから選択肢がない。」とも話していました。

 組合員からは、「いろんな工場から播磨工場へ、皆を集約してきたけど、それらは、一体何だったんだろうと言いたい。」、「シナジー効果なんて今、流行の言葉を使っているけど、隣の人でもメールでやりとりする時代に、集約して顔と顔を合わせてやりとりする意味があるのか。」、「播磨工場へ集約する時に、物づくりとして製造とエンジニアが一体化して、より良い物を作っていくという、シナジー効果を会社は言っていたじゃないか。」、「今までの経験から、移転集約するたびに組織のスリム化とか言って、結局は人員削減に行き着いているんじゃないのか。」などの声も出ていますが、その反面、「会社が言うように、それでなくても忙しい技術部門の人手不足対策として、フレキシブルな人の対応が可能となるのは良いことだと思う。」、「会社幹部も製造部門とエンジニア部門が離れることには危惧しているみたいで、出張ベースでの駐在や部門交流を考えているのは良いことだと思う。」という肯定的に受け取っている声も聞こえてきます。

 今回の移転集約問題の最も心配な声を上げているのは、派遣社員の人たちです。「川崎重工は、派遣先の会社とは時間単価で契約しているだけで、私らが交通費を貰っているかどうかは関知していない。結局は、交通費の自己負担分が自腹となってしまって、大損だ。」、「スリム化と言っているけど、結局は一番先に切られるのは我々だ。」、「正社員の人以上の内容の仕事をしているのに、移転集約問題が出ると不安になってくる。」などの声が出ています。

4.何のための移転集約か

 会社は、今回の移転集約提案の直前に開かれた中央経営協議会(6月6日)において、2010年度業績は、連結経常利益が当初の対外公表値を大幅に上回る491億円に達し、2011年度業績目標は、経常利益で520億円を目標とすること、また、プラント・環境カンパニーにおいては、「製担(製品担当)技術部門を総括部に、共通間接部門は旧K(カワサキ)プラント組織に融合して機能強化と固定費の削減を図っている。」ことを表明しています。

 そこで、会社は更なる利潤追求のために「固定費の削減」を図ると表明しているように、今回の移転集約の提案は「人員・組織のスリム化」が狙いではないでしょうか。

 物づくりの基本は何でも、トップダウンで決めるのではなく、播磨工場の物づくりに携わる幹部職員・組合員・派遣社員の一人一人の声を真摯に聞き、どうしたら物づくりの飛躍・発展に繋がるかを考えるべきす。

 2011年7月12日の生産専門委員会の席で会社側は、「人員・組織のスリム化」に対する組合からの質問に、「間接工数・人員のスリム化を目指しており、全体的に人員削減することは考えていない。派遣社員も引き続き、業務を行ってもらうことを基本に考えている。外注設計の方も基本的には移動していただき、引き続き業務を継続していただく。」と答えています。この言葉を職場の皆で、しっかり確認していきましょう。

(11.08.11)