川崎重工の新型コロナ感染症対策
働く人たちに予防対策の徹底を求めるだけでなく、大企業として独自の取り組みを!


いま、緊急事態宣言の延長の中で、新規感染者数の減少傾向が見られますが、重症者は高止まりしており医療危機は依然として深刻な状況です。さらに、感染力が強いとされるインドの「二重変異株」の広がりも見せ、いつ誰が感染してもおかしくない状況となっています。

また、職場でも感染者が増加しており、次のような感染への不安や対策を求める声があがっています。

「○○さんの職場でコロナ感染者が出たが、上長の対応は『同じ列の人のみ自宅待機(リモートワーク)で他の人は、体調が悪くなければ、普通に出勤するように』だった。おかしくない!」
「食堂で列をなしており、飛沫感染しないか気になる」
「変異株が拡大してきているのに、親はまだワクチン接種をしてない。感染したらひとたまりもないので心配だ」
「リモートワーク推奨と言っているのに、派遣は対象外だと言うので腹が立って仕方がなかった」等々

感染者の増加により、職場に行くこと自体が大きなストレスになっています。職場での感染を抑え、働く人々が安心して元気に働くために、大企業としてどのような感染症対策を行うべきかを考えてみました。

まず、川重社内の感染者数ですが、会社の発表によると、「PCR検査システムの先月の結果では、2000人の検査者のうち0.2%が無症状の陽性という結果」(3月30日付 エネルギーソリューション&マリンカンパニー企画本部)が出ており、「4月以降、国内従業員の感染者数が十数名/週の高止まり」(5月20日付 企画本部長/人事本部長)という状況です。

5000人規模の工場であれば、10人以上の無症状感染者の方が出社していることになりますし、国内感染者数と比較してもやや高い水準(注1)となっており、職場に不安が広がって当然の事態と言えます。

(注1)  国内感染者数:
厚労省の発表によると、4月の全国の感染者数は117,737人。
川重の年齢構成に合わせた20歳〜65歳の感染者数は、厚労省のデータでは全体の約7割となっているので82,000人。
総務省統計局のデータによると、20歳〜65歳の人口は約7,012万人。
20歳〜65歳の1万人当たり感染者数=82,000人/7,012万人=11.7人
 
川重の場合:  5月20日付の企画本部長/人事本部長通達では、1週間に10数名と言っているので、12人で計算。4週を30日/28日で1ヵ月に換算。
従業員(連結)は、2021年3月末の36,691人を使用。
1万人当たり感染者数=12人x4wx (30日/28日)/(36,691人/1万)=14.0人
  


川重は、これまで感染防止対策として、「時差出勤とリモートワークの適用拡大」「飛沫対策の徹底」「本人・家族の体調不良時の出社自粛」「不要不急の懇親会等の実施見送り」「食堂利用ルールの徹底」など、政府のガイドラインに沿って対策を推し進めてきました。内容的には、社員に頑張りを求める予防対策が主でした。
今日の感染拡大の状況を見れば、従来の対策の延長線での強化だけでは足りないと言えます。

大企業の社会的役割にふさわしい独自の感染症対策の取り組みを

感染拡大の第4波に際し、日本共産党は、政府に対し、これまでと同じ感染症対策の延長線ではなく、「コロナ封じ込めを戦略目標にすえ、ワクチンの安全・迅速な接種、大規模検査、十分な補償と生活支援の3本柱での対策を強化する」よう要請しています。

私たちは、いま日本国内で求められている「3本柱」の感染症対策は、職場の中でも基本的に同じことが求められており、大企業こそがその方向で積極的な役割を果たすべきであり、そして、それは国内での感染症対策を促進させると考えています。

日本経済団体連合会も、企業の社会的役割について、「事業者は、職場における感染防止対策の取り組みが、社会全体の感染症拡大防止に繋がることを認識」(4月13日付 オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン)して、感染拡大を防止するために積極的に貢献するよう要請しています。

以上の点から、川重は従来の感染防止対策に加え、新たに次の3本柱での感染症対策に取り組むよう提案します。

提案内容の考え方として、人間を大切にし、助け合うことを感染症対策の基本に据え、感染者を早期発見し保護・隔離すること、安心して医療にかかれるようにすることをベースにしています。感染者への偏見・差別や感染(自宅待機)による生活困窮は、感染を隠し、感染をさらに広げ、感染対策の大きな障害になると考えています。

感染者やワクチン未接種者への偏見・差別の問題では、川重がこれまで、どれだけ人権を大切にし、それを職場に浸透させてきたかが問われることになります。

1.職場でのワクチンの安全・迅速な接種
@すでに政府が計画を進めていますが、政府の指示待ちにしないで安全で迅速な接種に向けて直ちに取り組む。
接種は、希望者全員とし、社員・非正規社員のすべての人とその家族を対象とする。その際、予防接種法の附帯決議に明記されているように、「接種していない者に対して、差別、いじめ、職場や学校等における不利益取扱い等は決して許されるものではない」ということを周知徹底する。また、接種が困難な取引先にも接種の対象を広げる。
A自治体で行われるワクチン接種は、年次休暇使用ではなく特別有給休暇扱いとする。

2.無症状者に焦点を当てた大規模なPCR検査の定期的な実施
@自社開発の「全自動PCR検査システム」を活用し、社員・非正規社員のすべての人を対象に定期的な検査を実施し、感染者を早期に見つけ出し保護する。(注2)
A陽性者が出た職場は、業務の関連する職場も含めて直ちに全員PCR検査を実施する。

3.感染者の人権配慮と安心できる生活保障
@感染者の人権に十分配慮し、個人名が特定されることがないよう留意する。感染症から回復した社員・非正規社員やその関係者が、事業場内でいわれのない中傷や差別を受けることなどがないよう周知啓発し、円滑な職場復帰のための十分な配慮を行う。
A派遣社員が感染したことを理由に雇い止めしてはならない。さらに、感染者が安心して休業できるように、派遣先である川重も支援し、賃金が減額しないようにする。このことは、大規模なPCR検査を実施する上でも重要である。
BPCR検査を希望する人に対し、無償で実施する。

以上の取り組みによって感染を抑え込むことができれば、川重で働く人たちとその家族をもコロナ感染から守ることになり、感染不安も大幅に薄らぎモチベーションも向上するだろうし、そして、「経営陣への信頼」(注3)の回復や「全自動PCR検査システム」のアピールにもなるでしょう。

(注2)  私たちは、2020年6月に『2010年代の「川崎重工の経営計画」分析 何が浮き彫りとなり、コロナ禍にどう臨むのか』の中で、「コロナ禍から働く人々の命と健康を守る積極的な方策(例えば、プライバシーによく配慮した定期的な全員検査と陽性者の保護など)」を提起しました。 
(注3)  「WINDEX」の調査結果では、「経営陣への信頼」「社員を活かす環境」等が極めて低い評価となっていた。 


みなさん、一緒に考え職場で議論してみましょう。みなさんからのご意見・感想は大歓迎です。

 

(21.06.02)