改善されない長時間労働

2007年度の総労働時間

 5月20日に神戸本社にて開催された「生産専門委員会」で、会社より2007年度の総労働時間、所定外労働時間の実績が報告されました。以下はその実績を示したグラフです。

(川重労組ニュース第1583号より)

<長時間労働の実態>
 会社の説明によると2007年度の年間総労働時間は、2122時間で昨年の2142時間に比べると、若干減少したものの、依然として2100時間を越える水準にあるとしています。

 会社から説明のあった資料から見えてくるのは、それまで増加傾向にあった総労働時間と所定外労働時間が2006年度をピークに少し減少していることと、活況のKPM、ガスタービン、での労働時間が増えていることす。特にKPMは2224時間と2200時間を越える長時間労働となっています。
 また、昨年同様に2200時間を越える汎用機カンパニーの事務技術職についての労組の指摘に対し、会社は「2008年度も高操業が予想されるため、従業員の皆さんに協力を要請することになるが、少なくとも心身の健康に影響を及ぼさないよう、年休の取得や、休日に出勤した場合は必ず代休を取得させるなど、メリハリのある働き方を推進していく」と述べています。
 また、「本社、本部での協定時間である年間所定外労働時間540時間を越える組合員は何名いるのか」の労組の問いに対し、会社は2005年度1322名、2006年度1425名、2007年度1267名と回答しています。この数字は組合員だけなので管理職を含めるとさらに増えるものと思われます。

<世界の総労働時間>
 川重の総労働時間は2122時間でしたが、多いのか普通なのかこの時間は世界と比べてどうなのでしょう。下記グラフは過去36年間の先進主要国における総労働時間の推移を示したものです。日本は1970年に2250時間あった総労働時間が、2006年には1784時間にまで減少しています。この背景には、世界から「働きすぎ」という批判を受け、1987年に労働時間1800時間を国際公約し、1988年法定労働週を48時間から40時間へ短縮する改正労働基準法が制定されました。こうした流れの中で1990年代に週休2日制が普及したことがあげられます。しかし、減少しているとはいえ、依然先進主要国の中では高い水準に位置しています。
 ちなみに、川重の総労働時間2122時間は、日本全国平均の20年前の水準になります。また、KPMや、汎用機カンパニーの事技職の2200時間は35年前の記録開始時期の水準です。
 

<長時間労働の背景>
 長時間労働は、会社が言うように、年休取得の啓蒙や代休を取得させることでなくなるのでしょうか? 今回会社から提示された資料だけでなく、もう少し過去にさかのぼり総従業員数の推移・経常利益の推移と総労働時間の関係を見てみたいと思います。
 

  このデータでは、売上高がこの7年間ほとんど変わらないにも関わらす、人員が減少し、反対に総労働時間が増え続け、それにリンクするように経常利益も増えていることです。ここから見えるのは、利潤を追求するあまり、今までと同様の仕事量を、極限まで削減した人員で処理していることが見て取れます。その結果として経常利益も増え続けているものと思われます。
 以上見てきたように、長時間労働の背景には仕事量に対して人員が絶対的に不足していることが見てとれます。
 このことは会社も認めています。航空宇宙カンパニーの総労働時間が85時間減少していることについて、会社は「契約社員の採用や、社外工の活用により、総人員が増加したことなどが挙げられる」として、人員を増やすことで労働時間が抑えられることを認めています。実際に川重は、この10年間正規従業員の数を減らし、派遣社員や、社外工への振り替えを行ってきました。しかし、それでも人員は絶対的に不足しているのです。こんな中メンタルヘルスで長期に休む従業員の増加にも歯止めがかけられていません。その一因に長時間労働があるといわれています。今日社会問題になっている派遣社員や社外工の増員によって労働時間の減少をはかるのではなく、派遣社員を正社員にし、仕事量に見合った人員構成で仕事をすることが会社の責務ではないでしょうか。

(08.08.25)