3.経済学について

花ちゃん:

労働者が唯物論と、弁証法と、史的唯物論の世界観を持って団結したら、OK!!ってならないの?(P79)

太郎さん:

そうだよ!!ものの見方・考え方の土台であり、社会の土台であるのが経済というのも、今まで学習してきたことだよね。
 未来社会論の根本へ、本当に「科学の目」をすえるためには、いまの社会、つまり、資本主義社会の経済のなかに、未来社会への前進を必然なものとするどれだけの条件が用意されるのか、このことの解明が避けられない問題となってくるんだ。
 マルクスさん・エンゲルスさんが未来社会論、社会主義を科学の上にすえたという場合、その要をなすのが経済学だったんだ。

花ちゃん:

どうも、また、先が長くなりそうな予感がするけど・・!!力を合わせてすすみましょうね!!

太郎さん:

マルクスさんは、哲学の道をすすもうとしていたのが、エンゲルスさんと知り合って経済学の大切さを知り、エンゲルスさんは、マルクスさんの才能に接して、いやがっていた経営者の道をマルクスさんを支えるために選んだんだ。
 そして、二人は、経済学の研究に生涯にわたって力をつくしたんだ。

花ちゃん:

太郎さんが熱くなって、科学の目が目玉焼きになる前に、次に進みましょう!

太郎さん:

そそそ・・・それでは!資本主義社会は商品経済の社会、言い換えれば、市場経済の社会ということをとらえて、マルクスさんは、そこから「資本論」の分析をはじめたんだ。だから、マルクスさんにならってすすめていこうね!チョット冷めたかな!

3−1.商品社会(市場経済)をどうとらえるか

花ちゃん:

素朴な疑問?
商品経済社会=資本主義社会?でも大昔から市場があって物々交換もあったし、売り買いもあったわよね?

太郎さん:

まず、商品経済社会は資本主義社会の代名詞じゃないよ。それと、花ちゃんの言うとおり、大昔から、市場経済はあったね。しかし、商品社会がどのようにして資本主義社会へ発展したのかは、どうしても「商品」の分析が必要になってくるんだ。なぜ、そうなるのかは、マルクスさんの謎解きを見てゆこう!

花ちゃん:

なんだか、ドキドキするわね!

太郎さん:

 マルクスさんの分析の仕方は、厳密だから一つ一つ、しっかりと見てゆく必要があるんだけど、大丈夫かな・・・?
 それじゃ、商品経済とはどういうもので、マルクスさんは、どんな法則を、どのようにしてつかみだしたのか、「資本論」から見てゆこうね!

太郎さん:

(イ)まず、「資本主義的生産様式が支配されている諸社会の富は、『商品の巨大な集まり』として現われ」る、一つ一つの商品は、社会全体のこの「富の要素形態として現われる」と書いているんだ。だから、経済学は「商品の分析」から始まるわけなんだ。
(ロ)次に、どんな商品でも、人間のなんらかの種類の欲求をみたす性質をもっている、これが「使用価値」なんだ。
(ハ)商品は、人間にとって使用価値をもっているが、これを作った人が自分で消費してしまったら、商品にならないよね。それを他の誰かに売って、自分が必要な他の品物と交換する、こういうことができるから商品なんだよね。マルクスさんは、この面から見た商品の値打ちを「交換価値」と呼んだんだ。この交換価値の大小は、まず、使用価値の異なる他の商品と交換される割合ではかられるんだよ。
(ニ)使用価値の異なる商品が交換されるというのは、それが同じ値打ちをもっているからこそ、成り立つんだよね。マルクスさんの次の分析は、商品交換の際、なにが、性質の異なる二つの商品を同じモノサシではかる共通項になっているのかの探索にむけられるんだ。
 こうして追求してゆくと、共通項といて残るのは、その商品が人間の労働の生産物だという性質なんだよ。
 労働といっても、労働の具体的な形態は問題にならないんだ。どういう形にせよ、その商品の生産に人間の一定の労働がつぎこまれている、ということが、商品交換を成り立たせる共通のモノサシとして、浮かびあがってくるんだ。
 これが、具体的な姿・形をとりのぞいた人間労働一般、「抽象的人間的労働」と呼ばれるものなんだよ!
 こうして、マルクスは、商品交換の秘密をつきとめたんだ!!
(ホ)ここで、マルクスさんは、これまでの考察を、一つの結論にまとめているよ。その商品を生産するために人間の労働力が支出されたということが、商品の「価値」を形成する。この「価値」が、いろいろな商品の交換のなかにあらわれる共通物であって、価値の大小は、その商品の生産に必要な労働時間の長さによって決められる、などなんだ。
(へ)そのあと、価値の理解に関連する問題をとりあげているんだけど、その一つにこんな問題があるんだ。
 商品の価値が労働時間ではかられるとなると、不器用な人や怠け者の人が時間をかけて作れば作るほど、できあがった商品は大きな価値をもつのか。この疑問にたいして、マルクスさんは、そんな話は市場経済では通用しない、価値を生み出すのは「社会的に必要な労働時間」であって、不器用な人が余分な時間をかけても、その余分は、市場経済の勘定には入らない、と答えているんだ。(P85)

太郎さん:

長くなってすいません!ここは、一気に行かないと謎解きの糸がこんがらがっちゃうんで、もうしばらくお時間を・・・!

太郎さん:

また、同じ商品であっても、社会の生産力が全体として向上して、より少ない労働時間で生産できるようになると、その商品はそれに応じて下がってゆくということも解明しているんだ。
 それと、人間にとってどんなに有用なものであっても、その存在のために人間の労働を必要としないものは、価値をもたないということが、説明されているんだ。マルクスさんがあげている「空気」はその典型だけど、同じ「空気」でも、人間の加工の手が加えられる「圧搾空気」は、価値をもつようになるんだ。
 こうして、マルクスは、商品経済の法則を明らかにしたんだ!!
 商品世界には、実に多種多様な商品があって、たがいに交換されている。市場の変動はいろいろあるが、長い目で平均的に見ると、その交換の割合は、それぞれの商品の生産に「社会的に必要な労働」がどれだけ支出されているか、ということで決まってくる。それが、その商品の「価値」である−−−マルクスさんが商品の分析で到達したのは、こういう結論だったんだ。
 「資本論」のいちばん最初の節で登場する「使用価値」と「価値」という二つの概念は、これから資本主義社会のどんな問題を分析する際にも、どうしても必要になる基本的な概念になるんだ。

花ちゃん:

どうも御苦労様でした!でもネ〜ッ!商品の価値が労働時間によって決まってくるとか、機械化されて大量生産されると商品が安くなるって、あたり前じゃないの。それとも、私って、マルクス的かな!でも「使用価値」と「価値」の区別がなぜ必要なのかとか、いまいち、意味もわかりづらいわね!

太郎さん:

現代では、花ちゃんが言うように、あたり前になっていることが多かったね。でも、商品の「使用価値」と「価値」を理解していないと、搾取のしくみの謎解きができなくなるので、しつこいけど、もう少し、価値論に付き合ってね!

花ちゃん:

「サクシュ」のしくみの謎か!搾り取られている実感って、あまり感じないんだけど!

太郎さん:

 だから謎なんだよ!
 それじゃマルクスさんに聞いてみよう!
 「資本論」は、たいへん綿密な論理、一分のスキも残さない論立てで、議論を展開していっているのが、大きな特徴なんだ。ここまでくどくどやらないでもと思うところもなきにしもあらずだけど、価値論をはじめ、マルクスが「資本論」でとりあげているさまざまな問題は、どれも、それまでの経済学の世界で、無数の学者が多くの議論を展開し、挫折や混迷をくりかえしてきたものだったんだ。
 だから「科学的社会主義」の経済学がそこにがっちりと根をおろし、どんな相手にも負けない確固とした地位を確立するためには、こういう厳密な形で議論を組み立ててゆくことが、必要だったんだね!

花ちゃん:

市場経済っていうのは、大昔からあったのに、なぜ、価値法則がわからなかったの?

太郎さん:

「資本論」では、商品交換の歴史を、はるか古代、いや原始時代の共同体同士の交換関係にさかのぼって追跡しているんだ。商品交換というのは、おそらく数千年あるいは、それ以上の単位ではかられる歴史をもっているんだよ。
 しかし、それだけ長い歴史をもっていながら、商品経済を支配する法則、価値法則というものに、人間が気づきはじめるのは、資本主義の時代に入ってからなんだ。それには、理由があるんだよ。

花ちゃん:

それはどんなこと?

太郎さん:

たとえば、ギリシアの大学者だったアリストテレスさんは、商品交換に注目して交換関係の分析をやったんだけど、「価値」の発見にはいたらなかったんだよ。

花ちゃん:

なぜ、アリストテレスさんは、「価値」を発見できなかったの?

太郎さん:

マルクスさんは、「価値」概念に到達するためには、どんな人間の労働も、社会的な労働として、平等の性質をもっている、という認識が必要になるのだが、奴隷制度の時代のギリシアでは、いくらアリストテレスさんのような天才でも、人間の労働力の平等という認識には、到達できなかったのだ、と言うんだよ!
 だから、人間は、何百年、何千年と商品交換をやってきたが、その本性を理解できる道は、資本主義の時代になってはじめて開けてきたのであって、それだけの歴史が、価値法則の発見にも刻みこまれているわけなんだ。

花ちゃん:

それじゃ、いよいよ「サクシュ」の謎ときだわね!

太郎さん:

チョット待った!!
気持ちは、わかるけど、もう少し、お時間を!
 ここでチョット、市場経済について考えて見ようよ!たとえば、市場経済の効用とか、未来社会では市場経済はどうなるのか、などなんだけど!

花ちゃん:

くどいんだから!太郎さんの顔がマルクスに見えてきたわ!

太郎さん:

それじゃまず、市場経済の効用について考えて見よう!
 さきほど、不器用な人と器用な人の労働の話をしたけど、そういうことではない、労働の質の違いというものは、社会にはたくさんあるよね。

花ちゃん:

同じ人間同士なのに、学歴や性別や人種や障害の有り無しや、・・・などなど、腹が立つけど、世の中には、いやな暗黙の了解があるわね!

太郎さん:

市場経済の害悪は、花ちゃんが言う通りだね!しかし、単純労働と複雑労働の価値の比率は、どこかの役所の審査で決まるものでも、誰かが計算してはじきださせるものでもないね。ところが、社会では、おのずから、そういう比率が決まっていて、それが、世間的に通用しているよね。
 そういう、やっかいな仕事をいったい誰がやっているかというと、そこに市場経済の働きがあるんだ。

花ちゃん:

フ〜ンッ!悪いことばかりじゃないのね!ほかにも効用はあるの?

太郎さん:

たとえば、いろいろな産業部門の資本が、市場での競争のなかで、平均化されて、どの資本も平均利潤率をもつようになることが研究されているんだけど、これも市場経済の平均化の働きを表すものなんだ!
 ほかには、需要と供給の調節をはかる機能、競争のなかで生産性の向上の推進力となる機能など、さまざまな要素をあげることができるよね!

花ちゃん:

どんなコンピューターにも手に負えない調節や、競争させてやる気を出させる!
 市場経済は万能なのね!

太郎さん:

しかし、市場の需要を思惑的にあてこんで、特定の物をつくり過ぎ、あてがはずれて失敗したり、競争が激化して共倒れになったりと、市場経済の否定面も起きているよね!(P90)

花ちゃん:

それじゃ市場経済はどうなるの?

太郎さん:

そうだね!どうなるんだろ!
 でもはっきりしていることは、資本主義の矛盾をのりこえた新しい社会をつくってゆこうという時、その社会が国民にとって大切な経済のいろいろな面で、いま市場経済がやっている以上の力を発揮することができなかったとしたら、それでは、新しい社会の値打ちを人類史のうえで実証したとはいえない、ということになるよね!

花ちゃん:

思いは、なんとなくわかるけど、それでどうなるの?

太郎さん:

チョット、レーニンさんに聞いてみよう!
 レーニンさんは、ロシアで10月革命(1917年)、社会主義をめざす革命をやったあと、大きな失敗をしたんだ。それは、社会主義の経済には、市場経済はまったく要らないものだ、国の経済を計画的に運営してゆくうえで邪魔物になるだけだ、と思いこんでいたんだよ。
 革命後のロシアには、いろんな問題がいろいろあったんだけど、経済の面では、この市場経済否定論が大きな失敗のもとになったんだ。

花ちゃん:

それで、レーニンさんは、失敗したあと、どうしたの?

太郎さん:

干渉戦争もかたづき、平和をとりもどしたときに、経済政策の大転換にふみきったんだ。「新経済政策(ネップ)」(1921年)と呼ばれる転換なんだ。いまでは、「新経済政策」というと、市場経済を認めながら社会主義をめざす政策として有名なんだ。

花ちゃん:

結局、未来社会では、市場経済はどうなるの?

太郎さん:

レーニンさんに、もう少し話を聞いてみよう!
 レーニンさんは、国が重工業・銀行などの重要部門をにぎっていることが、社会主義的な方向づけの保障になるということを述べているんだ。また、市場経済のなかで、資本主義に勝てるだけの力をもたなければいけないとも言っていたんだ。

花ちゃん:

中国の「社会主義市場経済」や、ベトナムの「ドイモイ(刷新)」なんかが、レーニンさんの「新経済政策」と同じ流れなんだね!

太郎さん:

そうだよ!未来社会では、市場経済がいつまで、またどの範囲まで残るのかという問題は、僕たちのこれからの探究に残されている大きな宿題なんだよね!
 そのためにも、マルクスさんの搾取の謎解きに、付き合ってね!!