3−3.帝国主義について

太郎さん:

マルクスさん以後、資本主義経済のなかで起きた最大の変化は、20世紀をむかえて、資本主義が、独占資本主義の時代、帝国主義の時代に入ってきたことなんだよ!

花ちゃん:

帝国主義の時代?なにそれ!大日本帝国の帝国と同じなの?

太郎さん:

同じだよ!それじゃ、帝国主義とはなにか?から見てみよう!
 これは、言葉として言うと、独占資本主義だけに固有のものではないんだ。一般的に他国にたいする侵略主義や、他国を植民地として支配することを、「帝国主義」と呼ぶんだよ!そういう侵略主義は、資本主義の以前にもあったよね!

 

 ただ、20世紀以後の資本主義は、個々の国ではなく、資本主義の主だった国ぐにのすべてが、他国にたいする侵略主義や植民地政策を基本的な特質とするようになった、そういう段階にまできたというところに、なによりの特質があったんだよ!

花ちゃん:

ところで、さっきから独占資本主義って言葉が出てくるけど、資本主義=自由経済ってよく聞くけど、「独占」とは、矛盾するけど、どうなの?

太郎さん:

そうだね!
 レーニンさんは、他国にたいする侵略主義や植民地を基本とするような段階に入った資本主義を、「資本主義の最後の段階」としてとらえ、その侵略主義の根底に、自由競争から、トラストやカルテルなどの独占団体と金融資本が支配する独占資本主義の段階にすすんできた資本主義の新しい発展段階があることを明らかにしたんだ!
 だから自由経済から独占へと発展したことになるね!

花ちゃん:

しかし、この帝国主義が私たちに、なにか影響があるの?

太郎さん:

それが、おおありなんだ!そのためには、まず、レーニンさんが定義した帝国主義について見てみよう。
 「帝国主義とは、独占体と金融資本との支配が形成され、資本輸出が卓越した意義を獲得し、国際トラストによる世界の分割がはじまり、そして最大の資本主義諸国による地球の全領土の分割が完了した、そういう発展段階の資本主義である」と書いているんだ!

花ちゃん:

それがなあに?ぜんぜんわからない!

太郎さん:

レーニンさんが最後に書いている「地球の全領土の分割が完了した」という箇所だけど、これは、戦争と平和の問題ではたいへん大事なところなんだよ!
 19世紀の末ごろまでに最後の「空白」大陸だったアフリカの分割が完了したんだけど、いまアフリカの地図を見ると、国と国のあいだの国境線が、定規でひいたような直線になっているところがあるのに気づくだろ!これは、ヨーロッパの国ぐにが、アフリカ分割のための相談を勝手にやって、地図のうえに定規で国境線を引いた、つまり、帝国主義者による乱暴な分割の爪あとが、こういう形で残っているものなんだよ!

花ちゃん:

でもね〜ッ!帝国主義者が分割する植民地が無くなったらどうなるの?

太郎さん:

そこからが僕たちに大変な影響があったんだ!
 地球の分割が完了してしまうと独占資本主義国同士が力で奪い合うことになるんだ。それが、第一次世界大戦(1914年)だったんだよ。第二次世界大戦も基本的には同じだよ!

花ちゃん:

そうか!戦争の悲劇や正当性については、よく話を聞くけど、戦争の根本原因は、学校では教えてくれなかったものね!でも、この根本原因を知らなかったら、また、同じ過ちをくりかえすわよね!

太郎さん:

そうだよ!だから、レーニンさんの「帝国主義論」は、この世界大戦(第一次世界大戦)はいかなる戦争であり、なぜ起ったのか、どうしたら、世界はこの戦争から抜け出せるのか、こういう世界で問われた大問題にこたえるために、書かれたものなんだよ!

花ちゃん:

それじゃもう、過ちはくりかえさないわね!
 でも、第二次世界大戦も起きたわよ!?

太郎さん:

過ちをくりかえすか、くりかえさないかは、私たちの「科学の目」にかかっていると思うよ!それは、20世紀の百年間をへたいま、世界には新しい情勢が発展してきているんだよ!
 第一に、植民地体制がほぼ完全に崩壊したよね。
 第二に、植民地体制が崩壊した今日では、あれこれの国や地方でどれだけの影響力をもつかをめぐる国際的な争いはあっても、植民地を奪いあう、つまり世界再分割のための帝国主義戦争というものが問題になる条件はなくなったんだよ。
 第三に、二つの世界大戦をへて国際連合が生まれ、国際連合を中心とした国際的な平和秩序が、まだ決定的な力にはなりえないとしても、他国にたいする直接の侵略戦争など、あからさまな帝国主義的行動を抑制する、一定の力となっているよね。
 第四に、資本の輸出の問題があるんだ。発展した資本主義国から発展途上国への投資は、民間投資であれ政府投資であれ、それがきちんと必要な条件にかなう形でおこなわれるならば、南北問題(南の貧しい国、北の富める国)の解決をはじめ、世界的な進歩の流れに役立ちうる可能性が生まれているんだよ。但し、悪用されている問題もあるけどね!

花ちゃん:

いまの世界は、20世紀はじめ、レーニンさんが活動した時代にくらべて、いろんな変化が生まれているのね!

太郎さん:

世界の資本主義が、独占資本主義の段階にあるという基本は変わっていないけど、独占資本主義国のすべてで、独占資本や金融資本が本来もっている侵略性、支配欲などが、そのまま、その国の行動原理となっているかというと問題は、そう単純ではなくなっているんだ。独占資本主義の侵略性が、他国への侵略行動、抑圧政策として現れるには、いろんな困難と制約がある、そういう時代になっているというところが、大事なところだと思うよ!

花ちゃん:

それじゃ、日本は、独占資本主義国なんだったら、帝国主義国ってことなの?

太郎さん:

日本共産党の綱領では、日本は帝国主義復活の過程にある、つまり、帝国主義としての復活は完了していない、という規定なんだよ!
 日本が独占資本主義の国だという立場は、最初から明瞭にしているんだけど、帝国主義としての復活を完了したと規定するには、一面では、アメリカへの従属国になっているという状態の評価と、もう一面では、日本の独占資本主義の対外行動が、他国にたいする侵略を抑圧の行動として現にあらわれているかどうかの評価、という問題があるんだ。だから、日本は、まだ、帝国主義として復活したとは言えないんだよ!

花ちゃん:

それじゃ、アメリカは帝国主義国なの?(P134)

太郎さん:

僕たち日本の国民は、敗戦以来、すでに半世紀以上も、国中に外国の軍事基地がおかれ、領土も主権も侵害されて、その面では明らかに外国の帝国主義的な支配のもとにおかれているよね!日本でそういう帝国主義的な支配権をふるっているその外国が、アメリカなのだから、日本国民は、世界のなかでも、アメリカ帝国主義について語り、その帝国主義政策を告発する資格をいちばんもっている国民のひとつだと言っていいよね!

花ちゃん:

ということは、アメリカは帝国主義なのね!でも実感はないわ!

太郎さん:

実感の問題は、チョット横に置いといて、事実として、どうか?について見てみると、世界全体の規模で見ても、アメリカの政策と行動における覇権主義(武力をもって相手を抑えつけるやり方)と帝国主義は、まぎれもない事実だよね!
 世界の広範な地域に軍事基地をおき、軍事同盟の網の目をはって、地球上どの地域でも軍事干渉のできる体制をととのえていること、自国の「死活の利益」のためには、国連憲章も国際法も無視して、軍事行動に打ってでる世界戦略を、公然と発表していること、その軍事力の発動にあたっては「人道」などの看板をかかげて、他国の内政への干渉も強行することを宣言していることなどなど、「アメリカ帝国主義」という規定は、今日の世界の現実のなかに、十分すぎるほどの裏付けをもっているよね!

花ちゃん:

打倒!アメリカ帝国主義ね!これを打倒すればソ連が崩壊したように、世界の国々が、伸び伸びとしてくるわね!

太郎さん:

チョット待った!確かに今のアメリカを見れば、軍事的にも、経済的にも、外交的にも、地球環境を守る点についても、世界の食料危機についても、ありとあらゆる点で帝国主義的な政策と行動をとっているのは事実だよ!しかし、アメリカの政策と行動を、なぜ帝国主義と規定するのか、その具体的根拠を、いつも事実で明らかにしてゆく努力が、いよいよ必要になることを言っておきたいんだ!

花ちゃん:

わかったわ、太郎さん!今日のアメリカは、明日のアメリカではないってことね!アメリカの国民が自ら考えて、正しい方向へ「CHANGE」する日がくることを、見きわめようってことなのよね!

太郎さん:

そうだよ。その日がくるまで、「科学の目」をもってアメリカの政策と行動を監視し、世界の良識の世論をもって、常にアメリカに訴えていくことが大切だよね!

花ちゃん:

ソ連が崩壊した時、世界の資本主義国は、「資本主義が勝利した」と、しきりに宣伝していたわね!でもあれから20年たってもいないのに、世界経済の混乱やアメリカの勝手な軍事行動やテロの横行・地球環境の破壊的状況・食料危機・エネルギ危機などによって「資本主義はどうなるのか」という声が世界から聞こえてきているわよね!これから先どうなるのかしら?

太郎さん:

いよいよ、これからが「科学の目」で「世界や社会を科学する」時代になってきたのかもしれないね!それじゃ、もう一度「資本論」に立ちもどって、未来社会を考えて見よう!